ルールベースとAIについて徹底解説!

COLUMN(外観検査自動化)

ルールベースとAIの違い

ルールベースは、特定の問題やドメインにおいて、人間のエキスパート知識に基づいて事前に定義されたルールを使用して問題を解決します。一方、AIは、大量のデータを使用してモデルを訓練し、新しいデータに対して汎化性能を持つように学習します。

どちらのアプローチにも利点と欠点があります。ここでは、双方の特徴について詳しく解説していきます。

ルールベースの特徴

ルールベースは、特定のルールに基づいて行動を決定します。例えば、ある製品の品質を確保するためのルールは以下のようになります。

  • 製品の重量が基準値よりも大きいならば品質を合格とする
  • 製品のサイズが基準値よりも小さいならば品質を合格とする
  • 製品の色が基準値と異なるならば品質を不合格とする

メリット

ルールベースは、特定の条件に基づいて問題を解決するためのアプローチです。その特徴として、次のようなメリットが挙げられます。

  • 理解しやすい: ルールベースは、IF-THENルールなどの形式で記述されるため、人間が理解しやすいです。
  • 透明性: 各ルールが明確に定義されているため、システムの動作を理解しやすく、説明するのが容易です。
  • ルールの追加や変更が容易: 新しい情報やルールの追加、既存ルールの変更が比較的簡単に行えます。

デメリット

一方で、ルールベースのアプローチには次のようなデメリットも考えられます。

  • 複雑な問題に対応しづらい: 複雑な問題や状況に対応するためには多くのルールが必要となり、管理が煩雑になることがあります。
  • ルールの衝突: 異なるルールが競合したり、矛盾する場合があり、その解決が難しい場合があります。

AIの特徴

AIは、大量のデータからパターン(特徴量)を見つけ出し、その知識をもとに予測や判断を行います。例えば、顧客の購買履歴から好みや行動パターンを把握し、個別の製品やサービスを提供することができます。

メリット

AIのアプローチは、データからパターンや知識を学習し、問題を解決する能力を持ちます。以下はその特徴の一部です。

  • 複雑な問題に対応可能: データからパターンを学習することで、複雑な問題にも対応できます。
  • 汎用性: 学習済みモデルを他の問題にも適用できるため、幅広い領域で利用可能です。

デメリット

一方で、AIのアプローチにも次のようなデメリットがあります。

  • データ依存性: 適切なデータが必要であり、品質の悪いデータや偏ったデータが結果に影響を与える可能性があります。
  • ブラックボックス化: 深層学習モデルなどの一部の手法は、その内部の動作が理解しにくいことがあります。

ルールベースやAIの活用例

製造業における品質管理

製造業では、製品の品質を維持するためにルールベースが活用されています。特定の条件に基づいて製品の不良を検出し、製造プロセスを制御することが可能です。製品の特定の属性に基づいて判定ルールを設定し、自動的に品質を管理することができます。

AIでは、製造プロセスから得られる大量のデータを使用して、品質に影響を与える要因やパターンを学習します。これにより、異常な振る舞いや品質の低下を予測し、問題を事前に防ぐことができます。

金融取引の監視

金融取引の監視においても、ルールベースが有効です。特定の取引パターンや条件に基づいて不正取引やリスクを検出し、即座に対処することが可能です。不正取引やリスクを早期に検出し、金融機関の安全性を確保することができます。

AIでは、過去の取引データを分析し、異常な取引パターンを特定することができます。これにより、不正行為やリスクを自動的に検出し、適切な対策を講じることが可能です。

カスタマーサポート

カスタマーサポートでは、ルールベースが顧客からの問い合わせに対して自動応答を行ったり、特定の問題に対する解決策を提供したりすることができます。顧客サポートの効率化や利便性向上に貢献します。

AIでは、過去の顧客問い合わせや解決策の履歴を学習し、新しい問題に対して適切な回答を提供することができます。顧客の問題解決を迅速かつ効果的に行うことができます。

医療診断

医療分野では、ルールベースが患者の症状や検査結果に基づいて疾患を診断するために活用されています。特定の症状パターンや治療法に関するルールを適用し、診断をサポートします。医師が迅速かつ正確に疾患を診断し、適切な治療を行うことができます。

AIでは、大規模な医療データセットからパターンやトレンドを抽出し、疾患の予測や診断を支援します。これにより、より正確な診断結果を提供し、医療の質を向上させることが可能です。

セキュリティ

セキュリティ分野では、ルールベースが不正アクセスや侵入を検出するために利用されています。特定の不審な動きやパターンに基づいて警告を発することが可能です。システムやネットワークへの不正なアクセスを防止し、セキュリティを強化することができます。

AIでは、ネットワーク上の通常の振る舞いや異常を学習し、未知の脅威や攻撃を特定することができます。これにより、リアルタイムでセキュリティ対策を強化し、データの保護を行うことが可能です。

画像検査におけるルールベースとAI

画像検査におけるルールベースとAIの重要性

画像検査では、正確で迅速な判定が求められます。ルールベースとAIの組み合わせは、その要求を満たすための重要な手法です。ルールベースは特定のパターンや条件に基づいて画像を解析し、AIはデータから学習してパターンを抽出します。

ルールベースのアルゴリズム

エッジ検出

エッジ検出は、画像内の輪郭や境界線を抽出するための手法です。エッジ検出は、製造業において部品の輪郭を検出し、部品と背景を分離する前処理などに利用されます。また、製品の特徴を検出し、品種分類を行う際にも利用される活用範囲の非常に広いアルゴリズムです。

ヒストグラムに基づく閾値処理

画像の輝度値に基づいてヒストグラムを作成し、特定の閾値を超える領域を抽出する手法です。例えば機械部品の製造ラインでは、歯車や軸受などの部品の表面に微細な傷やへこみがあると、正常な動作を妨げる可能性があります。こうした微細な欠陥を検出するために、ヒストグラムに基づく閾値処理が使用されます。

形状検出

特定の形状やパターンを検出するためのルールベースのアルゴリズムです。特定の幾何学的な特徴を持つ物体を識別するのに役立ちます。工業製品の製造過程で特定の部品の形状を検出し、製造プロセスを制御することが可能です。

テクスチャ解析

画像内のテクスチャやパターンを解析するための手法です。異なる材質や質感の領域を識別し、分類することが可能です。入力画像から異常なテクスチャを分析し、良品との識別を行ったり、品種の分類などを行うことができます。

テンプレートマッチング

あらかじめ用意されたテンプレート画像と入力画像を比較し、類似度に基づいて物体の検出や位置推定を行う手法です。製造業において特定の製品パーツの位置を正確に特定する際に利用されます。

AIのアルゴリズム

異常検知

異常検知は、通常のパターンから逸脱した画像を検出する手法です。学習データに基づいて異常パターンを識別し、異常を検出します。製造ライン上で異常な製品を検出する際に、AIによる異常検知が活用されます。

画像分類

画像をあらかじめ定義されたクラスに分類するタスクに使用されるアルゴリズムです。画像の特徴を学習し、各クラスに対する確率を計算します。製造ラインでは部品の品種分類などに用いられます。

物体検出

画像内の物体の位置とクラスを同時に推定するタスクに使用されるアルゴリズムです。物体の境界ボックスとクラスラベルを予測します。自動運転車両において道路上の障害物を検出する際などに利用されます。

セグメンテーション

画像内のピクセルをクラスに分類するタスクに使用されるアルゴリズムです。画像内の各ピクセルに対してクラスラベルを予測し、物体領域を特定します。例えば医療画像から特定の臓器や組織の領域を分割する際などに利用されます。

ルールベースとAIを用いたソリューション紹介

Phoxterの「AI StellaController」はAI+ルールベースのハイブリッド検査により、無駄の削減効果が期待できる商品です。従来の「ルールベース」画像処理では、最適な「ルール」と「閾値」を見つけるのが困難でした。「AI StellaController」は、「NG品」と「良品」の学習により自動検査を実現します。データのばらつきがあっても安定した検査が可能で、不良流出リスクや廃棄コストを最小限に抑えます。製品の不良流出リスクや再検査、装置コストの削減を実現しました。「AI StellaController」は幅広い工程に適用可能で、3ステップで簡単に操作できます。ユーザーインターフェースは、設定画面の切り替え不要で操作が完結するため、使いやすく、誰でも簡単に導入することが可能です。学習と現場での検知を繰り返すことで、より高精度な検査ができるようになります。「AI StellaController」は、品質管理の革新と生産プロセスの無駄削減を実現します。

まとめ

今回はAIとルールベースの違いについて紹介しました。それぞれの特徴や利点、欠点について詳しく見ていきました。また、製造業や金融取引、カスタマーサポート、医療診断、セキュリティなど、それぞれの分野での活用例も挙げました。さらに、画像検査におけるルールベースとAIの重要性、アルゴリズムの具体的な説明、そしてPhoxter の「AI StellaController」という具体例を通して、両者の有用性と潜在的な応用範囲について解説しました。

ルールベースとAIの組み合わせにより、高度な画像検査技術が実現され、製造業や医療分野など多くの分野で利用されています。今後も両者の統合や新たなアルゴリズムの開発が進み、画像検査技術のさらなる発展が期待されます。