撮像について徹底解説!

COLUMN(外観検査自動化)

撮像とは

撮像技術は、光を使って対象物の像を作り出す技術です。この技術は、静止画や動画、さらには可視光線以外の波長を使った画像まで幅広い分野で使われています。

撮像の種類

撮像技術は、さまざまな方法で光を捉え、情報を記録することができます。以下では、主な撮像の種類について詳しく見ていきましょう。

デジタルカメラによる静止画撮像

デジタルカメラは、光を電気信号に変換し、その信号をデジタルデータとして記録します。これによって、静止した瞬間の像を捉えることができます。

ビデオカメラによる動画撮像

ビデオカメラは、連続した静止画像を高速で撮影し、それを再生することで動画を作成します。これによって、対象物の動きや変化をリアルタイムで記録することが可能です。

可視光線以外の波長を用いた撮像

可視光線以外の波長を利用した撮像技術は、通常の目では捉えられない情報を取得するために用いられます。代表的なものには、赤外線や紫外線などがあります。赤外線は、熱を放射する物体からの放射を捉えることができます。これによって、夜間の暗視や熱画像としての利用が可能となります。防犯システムや夜間の動物観察、建物の断熱状態の確認などに活用されています。

撮像に用いる機器

撮像技術を実現するためには、さまざまな機器が組み合わさって使われます。主要な機器としては以下のものがあります。

カメラ

カメラは、光を集めて画像を捉えるための装置です。対象物からの光をレンズを通してイメージセンサーに送り、そこで光を電気信号に変換します。デジタルカメラやビデオカメラは、このカメラの一種です。デジタルカメラでは、イメージセンサーがデジタルデータとしての画像を生成し、ビデオカメラでは連続した静止画像を高速で処理して動画を作成します。

照明

照明は、撮影対象に適切な光を当てる役割を果たします。良好な照明環境は、撮影される画像の品質に直接影響を与えます。照明の明るさ、色温度、照射角度などは、撮像結果に大きな差を生む要因です。製造現場や研究室などの照明条件は常に一定ではないため、撮影時の照明状態を調整できる照明器具が使われます。さらに、LEDライトやハロゲンランプなど、光源の種類や特性にも異なる選択肢があります。

レンズ

レンズは、カメラから出る光を制御し、対象物を正確にイメージセンサーに結像させる役割を持ちます。カメラの性能や使用環境によって、レンズの種類や性能が異なります。撮影する対象物の大きさや距離に応じて、焦点距離や倍率、解像度などが異なるレンズが選ばれます。広角レンズは広い範囲を一度に捉えることができ、望遠レンズは遠くの対象物を拡大して撮影することができます。

フィルター

フィルターは、撮影時に光を特定の波長範囲に絞ったり、特定の波長を遮断したりする役割を持ちます。撮影環境や撮影対象物の特性によって、フィルターを使って光の条件を調整することがあります。例えば、可視光線以外の波長を用いた撮像や、特定の色を強調したい場合に、フィルターを使って撮影条件を調整します。さらに、保護フィルターはレンズを傷や汚れから保護するために使われます。

イメージセンサーとは

イメージセンサーは、カメラにおいて光を電気信号に変換する装置です。デジタルカメラやビデオカメラには、CCDセンサーやCMOSセンサーなどが使われています

イメージセンサーの仕組み

イメージセンサーは、光が当たるとその場所の明るさを電気信号に変換します。これによって、画像がデジタルデータとして処理され、保存されます。光の強さに応じて、各ピクセルの電荷量が異なり、これが画像の明るさや色を形成します。

CCDセンサーとCMOSセンサーの違い

イメージセンサーには、CCD(Charge-Coupled Device)センサーとCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)センサーの2種類があります。それぞれの特徴を見てみましょう。

CCDセンサーの仕組み

CCDセンサーは、光を電荷に変換し、その電荷をピクセルごとに隣接する蓄積領域に蓄積します。次に、これらの電荷を隣接するピクセルに移動させ、最終的に読み出し回路で画像を生成します。CCDセンサーの最大の特徴は、高画質であることです。ピクセルごとに電荷を移動させることで、ノイズの少ないクリアな画像を生成することができます。また、ダイナミックレンジが広く、暗い部分や明るい部分の細かなニュアンスを捉えることができます。しかし、消費電力が大きく、高価な製造コストがかかるという欠点もあります。

CMOSセンサーの仕組み

CMOSセンサーは、各ピクセルが独立しており、光を直接電荷に変換します。各ピクセルには、光を感知し、それを電荷に変換するフォトダイオードと、その電荷を読み出し回路に送るトランジスタが含まれています。CMOSセンサーの最大の特徴は、低消費電力であることです。各ピクセルが独立しているため、必要なときだけ電力を消費します。また、製造コストが比較的低く、大量生産に向いています。ただし、従来のCCDセンサーに比べて画質やダイナミックレンジがやや劣る場合があります。

撮像機器の選定方法

撮像機器を選定する際には、用途や環境に合わせて様々な要素を考慮する必要があります。カメラ、レンズ、照明、その他の周辺機器を選ぶ際のポイントを以下で詳しく見ていきましょう。

カメラ選定のポイント

カメラは撮影の核となる装置であり、用途に応じて適切なカメラを選ぶことが重要です。

  • 撮影速度:高速な動きを捉える場合や連続撮影が必要な場合には、高速な撮影速度を持つカメラが適しています。製造ラインなどの高速なプロセスを撮影する場合には特に重要です。
  • 防塵・防水性能:屋外での撮影や環境の厳しい場所で使用する場合は、防塵・防水性能のあるカメラを選ぶことで長期間の安定した使用が可能です。
  • カメラタイプ:デジタルカメラ、ビデオカメラ、アクションカメラなど、用途に応じて適切なカメラタイプを選択します。ビデオ撮影や静止画撮影などの用途によって異なるため、事前に使用シーンを考慮しましょう。

これらのポイントを考慮して、撮影の目的や環境に適したカメラを選ぶことが重要です。品質管理や生産プロセスの効率化を図るためには、カメラの性能を最大限に活かすことが求められます。

レンズ選定のポイント

カメラのレンズは、撮影する対象物の距離や大きさに応じて選択する必要があります。また、撮影品質や表現力を左右する重要な要素です。

  • 焦点距離:撮影する対象物の距離に応じて、適切な焦点距離を持つレンズを選びます。広い範囲を一度に捉える広角レンズや、遠くの対象物を拡大して撮影する望遠レンズなどがあります。
  • 倍率:レンズの倍率は、対象物をどれだけ拡大して撮影するかを決定します。微細な部品や細かな模様を捉える場合には、高倍率のマクロレンズなどが有効です。
  • 光学特性:レンズの光学特性は、画像の歪みや色収差、フレア(光の乱反射)などに影響を与えます。撮影品質を向上させるためには、優れた光学特性を持つレンズを選ぶことが重要です。
  • 歪み補正機能:特に広角レンズを使用する場合には、歪み補正機能があると画像の品質が向上します。建物や機械部品などの撮影において、歪みのない正確な画像を得ることが可能です。

撮影する対象物の特性や撮影環境に応じて、適切なレンズを選ぶことが重要です。レンズの性能を最大限に引き出し、撮影品質の向上を図りましょう。

照明選定のポイント

照明は、撮影対象物に適切な光を当てることで、撮影品質を向上させる重要な要素です。

  • 明るさ:撮影対象物に適切な明るさを与えるためには、照明の明るさを調整する必要があります。明るすぎると過剰曝光になり、暗すぎるとノイズが発生する可能性があります。
  • 色温度:照明の色温度は、撮影される画像の色合いに影響を与えます。自然な色合いを再現するためには、適切な色温度の照明を選ぶことが重要です。
  • 照射角:照明の照射角は、撮影する対象物にどのような光を当てるかを決定します。広い範囲を均一に照らす広角照明や、特定の部分を強調するスポットライトなどがあります。
  • 照明の安定性:長時間の撮影や連続撮影を行う場合には、照明の安定性が重要です。光の安定性が保たれることで、撮影品質の一貫性を確保することができます。

撮影する対象物の特性や撮影環境に応じて、適切な照明を選ぶことが重要です。明るさや色温度、照射角などを考慮し、撮影条件に最適な照明を選定しましょう。

その他周辺機器選定のポイント

撮像には他にもさまざまな周辺機器が使われます。画像処理装置やデータ保存装置など、システム全体を考えて適切な機器を選びましょう。

撮像事例の紹介

製品の検査を行う際に画像が用いられることがあり、その際撮像の良し悪しは検査精度に大きく影響を及ぼします。ここではPhoxterで扱った撮像方法を改善し、検査精度が向上した事例を紹介します。

スプリングワッシャーの品質検査

スプリングワッシャーなどの小さく、金属光沢面のある部品の外観検査は難易度が高い傾向にあります。その際に照明の種類や当て方を最適化することで欠陥が検出できるようになります。以下の図は、照明を最適化しなかった場合と最適化した場合の画像です。ヒートマップ画像を見ると照明を最適化することで欠陥が確認できることがわかります。

コネクタの異物・汚れ検査

コネクタにおいても金属光沢面があることから、外観検査の難易度は高いと言えます。ここで示す例は照明以外の条件は全く同じものです。良い例と悪い例を見比べると良い例では欠陥が確認でき、欠陥検出に適していることがわかります。

化粧用パフの外観検査

化粧用パフも欠陥を検出しにくい製品の一つです。通常の撮像では欠陥が認識できないことがわかります。ここではドーム照明(HPD2)を利用しています。ドーム照明を利用することで、表面実装型LEDからの光が、ドーム形状の反射板の内面で乱反射し、均一領域の広い拡散光をムラなく照射できます。その効果により、リング照明の画像と比較すると凹みや汚れが検出しやすくなっていることがわかります。また、ローアングル照明でも欠陥を検出することができています。

黒ゴムの傷検査

黒ゴムは表面の色が黒であることから、外観検査の難易度が非常に高い製品と言えます。ここでは同軸照明(LFV3)を利用しています。ハーフミラーを使用することにより、LEDからの拡散光がカメラ軸に対して同軸上に落射することで鏡面ワークをムラなく均一に照射できます。ローアングル照明やリング照明を利用した撮像に比べ、指紋、傷、汚れを検出することができます。

まとめ

今回は、撮像技術について幅広く紹介しました。デジタルカメラやビデオカメラ、赤外線・紫外線撮像などの種類や、カメラ・照明・レンズなどの機器の選定方法を解説しました。さらに、CCDセンサーやCMOSセンサーの仕組み、撮像事例の改善例まで示しました。また、最も技術が必要となるのは、カメラ、レンズ、照明の組み合わせにより目的とする欠陥を良品部分と差を作る撮像技術に深い知識が必要となります。この深い撮像技術の理解を深め、適切な機器を選んで効果的に活用した光学設計こそが品質管理や検査精度向上に役立ちます。